マークスの山・実証見聞~北岳編

『マークスの山』ラストを飾るのは、合田さんと森くんの北岳登頂。
殺人犯・水沢を生きて逮捕するために、山岳救助隊、機動隊らと共に悪天候の危険な北岳に登ります。


北岳 (2)
戸部巡査部長、山岳救助隊と共に、合田さんと森くんが登った北岳。 


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《単行本 436P》
班分けが終了する前に、合田は救助隊の一斑とともに大樺沢の登山口へ飛び出した。重量六キロの防弾チョッキの上に、借り物のアノラックとゴアテックスの雨具の上下を付けただけの軽装だった。自分や救助隊員のペースに森がついてこれるとは思わなかったが、森が「行く」というので好きなようにさせた。「自分の心臓とよう相談して、もうあかんと思うたら、そう言え。無理するな」とだけ言っておいた。 

《文庫本・下巻 386P》
「森! 俺たちは走るからな。ついてこられない場合は無理するな」それだけ森に言って、合田は戸部らとともに山荘を飛び出した。まだ暗い雪をついて二百名の捜査員が一斉に動き出した。 

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広河原
広河原。 北岳に入山した水沢を追うために、県警200名の捜査員と、合田・森が集結した場所はココか。


八本歯梯子2
八本歯の木梯子・その1。 森くんが合田さんに叱咤激励されながら登った例の梯子は、多分コレだろう。


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《単行本 438P》
先頭の救助隊員らは、素早く岩場の木梯子を登り始めた。合田はへっぴり腰の森を先に行かせて、下から叱咤した。前屈みになるな! 背筋を伸ばせ! こら、右足! 真っ直ぐ載せろ! 岩、落とすな! 前後の男らが笑い、合田も笑った。皆が自分を叱咤するために笑い、その声が強風に散っていった。 

《文庫本・下巻389P》
先頭の戸部が岩場に設置されている木梯子を真っ先に登っていった。合田はへっぴり腰の森を先に行かせ、下から怒鳴った。右足、真っ直ぐ載せろ! 前屈みになるな! 男やろ、しっかりせんか! 前後の男たちが笑いだし、合田も自分を叱咤するために笑い、その声が強風に散っていった。 

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八本歯梯子
八本歯の木梯子・その2。 長く続く八本歯の最後の梯子。


八本歯梯子3
八本歯の木梯子・その3。 上のその2を別の位置から撮った写真。
コレってたぶん、夏の北岳の写真だよねぇ。『マークス』では、10月20日、天候は雪。
そんな時期によくこんな所、登ったなぁ(溜息)。


八本歯
木梯子を登り終えると、こんな岩がゴロゴロ。ここを登ると北岳山頂。


北岳山頂はすぐそこ
北岳山頂まで、あと少し。 しかし、合田さんと森くんが登った北岳は遭難の危険も有り得る悪天候の雪山。
景色もこの写真とはだいぶ違っただろうし、環境はもっと厳しかっただろう。
そんな悪天候の北岳を駆け登った合田と森。凄いよ、ふたりとも。 (しかも、森は登山初心者)


北岳山頂2


北岳山頂3
北岳山頂。この場所で水沢発見。しかし、生きて逮捕出来ず・・・・。


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《単行本 439P》
夜明け前の、闇の中の闇だった。数本の懐中電灯の明かりの中に、天空に向かって立つ北岳山頂の道標が一本立っていた。その下に、水沢裕之は東の方向を向いて座っていた。
無線が飛び交った。《発見! 水沢を発見! 北岳山頂。死亡》 

《文庫本・下巻 390P》
午前六時半。黎明の薄日もない濃いガスのなかだった。天空に向かって頂上を示す道標が一本立っており、その下に水沢裕之は東の方向を向いて座っていた。 

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北岳山頂




北岳からの富士山
合田さんと森くん、そして水沢が見た北岳山頂からの富士山はこんな感じだったのか?


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《文庫本・下巻 392P》
水沢が真知子と一緒に一晩待ち続けた天上の朝は、ゆっくりと明けていった。
午前六時五十分。空気を裂くような一陣の突風が最後のガスを吹き払ったとき、東の空いっぱいに正三角形の巨大な山影が浮かび上がった。雲海の上には茫々たるその山しかなく、その稜線には中腹まで昇ってきた太陽の、臙脂色の光輪が広がっているだけだった。
手前にもその向こうにも何もない。天空に浮かぶ富士山一つの姿を、水沢はいま、見ていた。  


《単行本 439~440P》
黎明の虚空を眺めていた森が、「あ!」と声を上げた。
天空を裂くような一陣の強風が、最後のガスを吹き払ったときだった。東の空一杯に、正三角形の巨大な山影が浮かび上がってくる。雲海の上にはその山しかなく、その彼方にはまだ昇らない太陽の、かすかな来光の片鱗がかかっている。
合田は思い出した。この白峰三山の稜線に立つとき、東側に見えるのはいつも、どこまでも、空と光と、真正面に浮かぶ富士山頂の姿しかなかったことを。その手前にも背後にも、何もない。ここから望めるものは、日本一の富士一つだ。
水沢裕之の眼球は、雲海に浮かぶ富士山景を真っ直ぐに見据えていた。その魂を犯し続けてきた《マークス》から逃れ逃れてここに辿り着き、真知子と一緒に、一晩待ちわびていた天上の夜明けが、もうそこまで来ていた。 

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黎明に浮かぶ富士山 それとも、こんな感じ?


子供の頃の一家心中事件。その結果、両親は死に自分だけ生き残った水沢。
一酸化炭素中毒の後遺症が脳に残ったかもしれないことや、その後引き取られた豆腐屋夫婦の冷たい仕打ち。
「もう少し違った環境を子供時代に過ごしていたら、水沢も違った人生を歩んでいたかもしれない」
そう思うと、この結末に胸が痛みます。

せめて水沢が、北岳山頂からの富士山を最後に見れたことを信じたい。


これにて 『マークスの山』実証見聞 終わりです。



この《マークスの山・実証見聞~北鎌尾根・涸沢小屋・北岳編》は、ホームページからも観れます。
コチラの方が閲覧しやすいと思いますのでよかったらどうぞ。
      ↓
DAYDREAM/ウェブサイト


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


写真は、コチラのサイト様から拝借させて頂きました。
http://www.japanesealps.net/south/kitatake/happonba.html
http://morinobuna.at.webry.info/200909/article_11.html

勝手に使ってスミマセン。

著作権問題、大丈夫なのか?・・・・心配だ。

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Author:YUKI
高村薫小説、大好き!!
『晴子情歌』で挫折し、暫く高村小説からは遠ざかっていましたが、最近やっと『太陽を曳く馬』『冷血』『晴子情歌』『新リア王』(読了順)を読了。
これでたぶん、単行本化された髙村小説すべて制覇したと思います。
合田シリーズに登場する過去の人、
森くんをこよなく愛す、おバカです。

2012.5.4 ブログ開設
2013.1.1 ウェブサイト開設

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